戦場にて 完結編



もう、どれくらいの時が流れただろうか?
いつしか、僕は、戦場で独りぼっちになっていた。
女兵士も僕の側から離れ、部隊に所属する男の所へ行った。
それでいい。
僕は、反乱兵なのだ。
裏切り者なのだ。

一人荒野を彷徨う。
手にした武器も、もう錆び付いて役立たずになっている。
かといって、新型の武器を手に入れる気にはならなかった。
僕は、戦場での暮らしに疲れ果てていた。
「何も良いことが無いじゃないか!」

やがて、目の前に広大な海が広がってきた。
「南の島に行きたい!愛する人と、南の島に行きたい!」
毎日、海を眺めながら、僕は、夢見ていた。

ある日、奇跡が起こった!
手紙が届いたのだ。
「私と南の島に行きましょう!」

僕は、小躍りした。
やっと願いが叶うのだ!南の島に行けるのだ!

僕は、寸暇を惜しんで彼女と会った。
離れている時間が辛かった。
「早く二人で南の島に行こう!」

僕が急かしたのがいけなかったのか?
彼女は突然、僕の前から姿を消した。
みんな、幻だったのだ。
僕が見た夢・・・、いつか見た夢・・・。

僕は、戦場を去る決意をした。
もう戦う気力は残っていなかったのだ。

浜辺に流れ着いた木ぎれを組んで、イカダを作り、沖に向かってこぎ出した。
1匹の猫が飛び乗ってきた。
僕は、その猫をPEACE(平和)と名付けた。

「なあ、PEACE。これからは、静かに暮らそう。
もう戦うことは止めよう。」

戦場は、もう遠く彼方に霞んでいた。

戦場は、もう思い出の中にしか存在しない。
僕とPEACEを乗せたイカダは、何処かの浜辺に流れ着くだろう。
そこに、小さな家を建てよう。
誰かが、僕を見つけても、僕は、別人になっている。
もう、戦場を離れたのだから・・・。


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