続・戦場にて



僕は、まだ、戦場にいた。
隊長と先輩が部隊を去った後も、戦場に残った。
譲り受けた武器と弾薬を背負い、部隊の中にいた。

部隊の人数は、どんどん増えていった。
新米だった僕が、いつしかベテランと呼ばれるようになった。
でも、それは、ただ部隊の創設時からのメンバーであるだけのこと。
僕は、自分自身の実力を知っていた。

部隊では、さまざまなテントが建てられた。
そこに皆は、集まった。
僕も、たびたび遊びに行った。
皆、武器を見せ合い、お互いの武器を誉め合った。

武器を改造する者、自分の給料をはたいて新型の武器を購入する者・・・。
それが、当たり前になっていた。
僕は、疑問を感じ始めていた。
「彼等は、戦うことが好きなんじゃないのか?
武器が大好きな武器マニアじゃないのか?
戦場をいつかは去りたいとは思っていないんじゃないのか?
僕は、いつかは、戦場を去り南の島に行きたい!
戦うことが好きなんじゃないんだ!
僕一人が、彼等とは違う!」

僕は、次第に誰のテントにも遊びに行かなくなった。
武器には興味が無いのに、演技をしていることが辛くなったのだ。
自分の武器には、人一倍の愛着を持っていたが、他人の武器には全く興味が無かった。
僕は、一人、部隊で孤立した。
でも、部隊を抜ける決心がつかなかった。
一人で戦場を彷徨うことが怖かった。
部隊を抜けたことで、敵と見なされることが怖かった。

ある日、一人の女兵士が部隊に迷い込んできた。
「ここは、女の来るところじゃない!帰った方がいい!」
それでも、彼女は、戦場を去らなかった。
僕は、武器を持たない彼女に隊長から譲り受けた武器と弾薬を渡した。

やがて、部隊は、緑深いジャングルの前に出た。
皆、先を争うように奥地まで入っていく。

「それ以上、先に進むと、もう後戻り出来なくなるぞ!
戦友達よ、いつかは戦場から抜け出して一緒に南の島に行こう!
ここは、長居する場所じゃないんだ!」
心では思いながら、口に出す勇気は無かった。
僕は、戦友達の後ろ姿を見送った。
僕は、ジャングルの入り口で、ひとりぼっちになった・・・。

「隊長ー!先輩ー!」
僕は、心細さに泣き叫んだ。

僕は立ち上がりジャングルから離れた荒野に向かって、一人で歩き出した。
「なあ、これから何処へ行こう?」
僕は、肩に担いだ隊長と同じ旧型の武器に話しかけた。

後から女兵士が僕と同じ武器を担いでついてきた・・・。


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