同行二人



そこは、大きな橋の下の河原だった。
いつからか、一人の男が、段ボールで家を造って住んでいた。
どこの誰なのか、知る人はいなかった。

土曜日の夜だった。
その河原に、何台もの車やバイクが集まりだした。
暴走族の集会が始まるようだ。
男の段ボールの家が、ライトに照らされた。

「おいおい、乞食が住んでるぞ!」
誰かが、おもしろそうに叫んだ。
「イヤッホー!ゴミ掃除しようぜ!俺達、正義の味方、そこんとこヨロシク!」
数人の男達が、段ボールの家に近づいた。
「オイ、乞食!出てこい!コラ、ゴミ人間!出てこい!」
男が、オドオドと出てきた。

「お前ら、社会のゴミなんだよ!俺達が、掃除してやるよ!
お前も死にたいだろ?殺してやるから、有り難いと思え!」
男達は、男に暴行を加え始めた。

「汚い家を建てやがって!目障りなんだよ!」
段ボールの家は、壊された。
「うわっ!何だこりゃ!?」
中から、一体の美しい人形が現れた。
「人間の女かと思ったら、人形か!うまくできてるぜ。
あれ?こりゃーダッチワイフじゃないのか!?
あははは、傑作だぜ!」

男は、血だらけになりながら叫んだ。
「その人形には、触れないでくれ!
僕は、どうなってもいいから、その人形だけは・・・。」
「うるさいんだよ、喋るな!ゴミのくせに!
どれどれ?おーっ!このダッチワイフ、なかなか良いぞ!
俺、この人形犯す。お前ら、乞食を退治する。そこんとこヨロシク!」

男は、代わる代わる暴行を受け、薄れゆく意識の中で聞いた。

「この人形、バツグンにいいぜ!お前らもやってみろよ!」

♪それっ、お次の番だよ、お次の番だよ♪

男の意識が戻った。
死んではいなかった。
男達の姿は、無かった。
男は、ボロ雑巾のようになった身体で、人形にヨロヨロと近づいた。
人形は、ドロドロに汚されていた。
男は、無言で、また、ヨロヨロと川の方へ歩き、タオルを水に浸け絞り、
人形に近づいた。
そして、人形の身体を拭き始めた。

「お前を守ってやれなくて、御免な。
僕に力が無くて、御免な。」
男は、しゃくり上げて泣きながら、一生懸命に、人形の身体を拭いた。

雨が降ってきた。
男は、ゴミ捨て場から、リヤカーを拾ってきて、人形を乗せた。
雨が当たらないように、段ボール箱を被せて。

男は、ヨロヨロ歩き出した。
人形と二人、静かに暮らせる場所を求めて・・・。


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