人形



チャイムの音がした。
部屋のドアを開けてみると、男が立っていた。
「お宅に荷物が届いてるんですけど、重いので、運ぶのを
手伝ってほしいんですわ。」

その荷物は、頑丈に梱包された大きな木箱だった。
何も、心当たりが無かった。
届け先は、確かに僕だ。
しかし、送り主は、水性のサインペンで書かれているみたいで
水に濡れたらしく消えてしまっていた。

「忙しいので、早くお願いします。」

男にせかされて、荷物を部屋に運び込んだ。
男は、用が済むと、慌てて帰っていった。

さて、荷物だ。
梱包をほどくには、大工道具がいりそうだ。
そんな物は、持っていないので、町へ買いに出た。

道具を使い、注意深く、梱包をほどく。
そして、木箱を開けてみた。
心臓が止まりそうになった。

下着姿の女が、ロープに縛られ、椅子に座らされていた。

「もしもし・・・、もしもし・・・。」
声をかけてみても返事が無い。
ロープをほどき、女を抱えて、ベッドに運んだ。
脈を診てみると生きてはいるようだ。

「警察に知らせなければ、いけない!!」
即座にそう思ったが、出来なかった。
なぜなら、その女が、あまりにも美しかったから・・・。
僕のベッドの上に、今まで見たこともないような美しい女が横たわっている。
誰が何の目的で、この女を僕に送りつけたのかは、分からない。
でも、僕は、一目で、この女に心を奪われたのだ。

見るだけならいいんじゃないか?
女の下着を脱がして、素っ裸にした。
まるで絵に描いたように完璧な身体だった。
そうだ!この前買ったルーペがあった!
僕は、ルーペを使い、女の身体を隅々まで観察した。
次第に欲情がこみ上げてきて、爆発しそうになった。
もう、頭の中は、空っぽだった。
気が付けば、僕は、その女を犯していた。
もう、僕は、立派な犯罪者だ。
どうせ捕まるなら、とことん行ってやれと思った。

それから、狂ったように何度も女を犯した。
その意識の無い女は、僕を拒まなかった。
僕だけの女だった・・・。

やがて異変に気付いた。
女の様子がおかしい。
脈を診てみる・・・。
死んでいる!!僕が、殺してしまった!!
強烈な罪悪感が、僕を襲った。

女の身体は、異臭を放ちながら腐り始めた。
グロテスクな虫達が、女の身体を啄んでいく。
あの美しい女が、醜く崩れていく・・・。
僕は、側に腰掛け、その様子をぼんやり眺めた。
女は、骨だけになってしまった・・・。

僕は、都会の大きな書店で、人形制作関係の本を買いあさった。
むさぼるように知識を詰め込んだ。
そろそろ、作業に取りかかろうと思う。
あの女の骨を元にして、あの女を再生させるために・・・。


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