小さな手紙



日曜日の昼下がり・・・。
僕は、また、土曜日の夜、遅くまで起きていた。
なかなか眠くならなかった。
いつものことだ。

目覚めた僕は、枕元のメガネを取ろうとして、ある物に気付いた。
小さな紙切れだ。
一辺が、3oぐらいで正方形の白い紙切れ。
それが、メガネのレンズの下にあった。
僅かに拡大されたそれに、何かが、書かれているのが見えた。
メガネを掛けて、指先にその紙切れを乗せて、顔を近づけた。
文字だろうか?絵だろうか?小さすぎて見えない。
ルーペがあれば、見ることが出来そうだ。

僕は、それを、失わないように、テーブルの上に乗せ、本で押さえた。
そして、急いで服を着て、ルーペを買うために外へ出て
車に飛び乗った。

休日のため、道路は、渋滞していた。
バックミラーを覗くと、後ろには、アベックが、乗った車。
楽しそうに、何かを話している。
僕が、チラチラ見ていることに気付いた男は、
表情を変えて、鏡越しに僕を睨んだ。

何時間もかけて、近くのスーパーに、たどり着いた。
文具売場に行ってみると、
札は、掛かっているのにルーペが、無い。
店員に尋ねると、売り切れだと言われた。
眼鏡店に、行ってみる。
そこでも、売り切れだった。

隣町まで、足を延ばしてみる。
うんざりするような渋滞。
ふとバックミラーを覗いてみる。
驚いたことに、また、後ろの車は、あのアベックだった。
僕は、バックミラーから、顔を逸らせた。

歩いた方が、早いような状態。
辺りは、もう、黄昏て来た。
空を見上げると、大きな赤い月が、出ていた。

小学校の前を通りがかった時、古ぼけた文具店が、目に止まった。
車を道の端に止め、店じまいをしている老婆に尋ねた。
「すみません。ルーペは、あるでしょうか?」
「虫メガネ?そこにあるよ。」
それは、おもちゃの虫メガネだった。
無いよりはましだと思い、購入する。

帰りは、スムーズだった。
それでも、家にたどり着いた時には、もう、すっかり夜になっていた。
家のドアを開けようとした時、誰かの視線を感じた。
空からだ!
信じられないくらい大きな満月だった。

部屋に入って思った。
あの紙は、どう考えても、おかしい。
あんな小さな文字が、人間に書けるだろうか?
絵だとしても、おかしい。
なぜ、あんな物が、僕の枕元にあったんだ?
人間ではない、何かからの手紙!
そう考えたら、寒気がしてきた。

それで、あの紙切れ・・・、
どうしたかと言えば、
今も、僕の家のテーブルの上にある・・・。



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