タンポポ4
フレンズ



「エンジェル」に新人さんが入店してきました。
ソフィアちゃんです。
お店の女の子に紹介されるといきなり言いました。
「ここのナンバーワンは誰?」
店長が「1番人気があるのはマリンちゃんだけど。」と言うと
「マリンて誰?」と尋ねました。
マリンちゃんが、「私がマリンだけど・・・。」と言うと
「な〜んだ、全然、ブスじゃん!楽勝、楽勝♪」と言い放ちました。

ソフィアは、元銀座のホステスでした。
そのせいか、ナンバーワンになることにこだわりを持っていました。
美人でスタイルのいいソフィアは、たちまち人気者になりました。
それでも、マリンちゃんを追い抜くことは出来ませんでした。
ソフィアは、お店の女の子を捕まえて訪ねました。
「ねえ、何でマリンが人気者なの?あの程度の女、その辺を歩いてるじゃない!」
「さあ・・・、私も不思議に思ってるけど、この前、マリンちゃんに付いたお客さんが
私に付いたの。
その時、聞いてみたんだけど、マリンちゃんて、お客さんの良いところを見つけて
誉めてくれるんだって。
それで、お店に来たときに落ち込んでた人も元気になって帰っていくんだって。」
「フン!ただのゴマスリじゃん!」

ソフィアは、マリンちゃんに勝つためにハードサービスを始めました。
でも、そのせいで、お客さんに病気を移されて、しばらくお休みすることになりました。
店員の小原が、マリンちゃんに話しかけてきました。
「マリンちゃん、ソフィアのやつ、性病を移されたらしいんすよ。
うちは、生は禁止してるのに、指名客を増やすためにやってたらしいんすよ。
いい気味だよ、あんな女!」
「小原君、お店の女の子の悪口を言うなんて、ソープの店員失格だよ!」
「す、すいません。」
「ねえ、小原君、ソフィアちゃんの住んでるところ知ってる?」
「まあ、調べれば分かりますけど・・・。」
「私、お見舞いに行ってくる。」
「ええっ!?マリンちゃんが、何で!?」

ソフィアは、都内の高級マンションに住んでいました。
駐車場には、沢山の高級車が停められています。
マリンちゃんは、花束を持ち、インターフォンを鳴らしました。
しばらくするとオートロックの入り口が開きました。
ソフィアの部屋のチャイムを鳴らすと、ドアが少し開きました。
「マリン・・・、私を笑いに来たの?」
「違うよ。同じお店で働いてる仲間が病気になったんだからお見舞いに来たの。」
「仲間?フン!何を良い子ぶってるのよ!
私、あんたみたいな女を見てるとチョーむかつくのよ!帰ってよ!」
その時、部屋の奥から男の声がしました。
「おい、誰か来たのか?」
「ううん、ただのセールスよ!」
ソフィアは、マリンちゃんが持ってきた花束を掴むと廊下に投げ捨てました。

数日後、また小原がマリンちゃんに話しかけてきました。
「マリンちゃん、ちょっと情報を掴んだんすけど。」
「情報?」
「ソフィアのことなんすけど、あいつ『ミスタージゴロ』のケンちゃんていう
ホストに入れあげて貢いでるらしいんすよ。
それで、風俗に流れて来たらしいんすよ。
前は、吉原にいてかなり有名な話だったらしいんすけど・・・。」
「小原君、そのホストのいるお店って知ってる?」
「まさか、マリンちゃん、会いにいくんすか!?」

マリンちゃんは、おめかしをして「ミスタージゴロ」へ行きました。
マリンちゃんが席につくと男がやってきてひざまづいておしぼりを渡しました。
「ねえ、ここにケンちゃんて居る?」
「ケンをご指名でございますか?しばらくお待ち下さい。」
しばらくすると長身でモデルのような男がやってきました。
「初めまして、ケンです。ご指名、ありがとうございます。」
その声は、ソフィアのマンションで聞いたのと同じでした。
「あなたソフィアちゃんて知ってるよね?」
「ソフィア・・・、あー、明美のこと?で、あんた、明美の何なの?」
「私、同じお店で働いてるんだけど・・・。」
「何だ、あんたもソープ嬢か!それで、俺に何の用?」
「あなたソフィアちゃんをどう思ってるの?」
「勿論、俺の愛してる女の一人さ!みんな、俺の可愛い女さ!」
「みんな?」
「当たり前だろ?俺達ホストは、何人もの女に貢がせてナンボの商売なんだよ。
お前らソープ嬢だって、身体を売って男から金をぶんだくってるんじゃないか!
それで、ストレスが溜まれば俺達ホストが奉仕して気持ちを癒してやってるのさ。
言わば、持ちつ持たれつの関係ってやつさ!」
「そんな気持ちでソフィアちゃんと付き合ってたの・・・。
だったら、ソフィアちゃんと手を切って!」
「お前に、そんなこと言われる筋合いじゃないよ。帰れ!」
マリンちゃんは、追い返されてしまいました。

翌日、お店にやってきたソフィアは、マリンちゃんを見つけるといきなり殴りかかりました。
店長と小原が慌てて押さえつけました。
「マリン!ケンちゃんに何を言いに行ったの!?
私、ケンちゃんに嫌われたくなくて必死なのに!」
「ソフィアちゃん、あんな男とは別れた方が良いよ。
その方が、絶対、ソフィアちゃんの為になるよ。」
「放っておいてよ!あんた、私の何のつもりなのよ!?」
「友達だよ。同じお店で働いてる仲間だよ。」
「友達!?仲間!?フン!私は、そんな甘いこと考えたことも無いよ!」
ソフィアは、大暴れをすると帰っていきました。

数日後、また小原が情報を持ってきました。
ケンがヤクザの奥さんに手を出して、命を狙われているらしいのです。
ソフィアを心配したマリンちゃんは、マンションに向かいました。
いくら呼びかけても応答が無いので管理人に姉妹だと嘘を言って部屋の鍵を渡してもらいました。
部屋に入ると荷物は持ち出され、何も残っていませんでした。
「ソフィアちゃん・・・、なぜ、あんな男に付いていくの?」
マリンちゃんは、部屋に立ちつくし涙を流しました。

数ヶ月後、店長がマリンちゃんに話しかけてきました。
「マリンちゃん、また、新しい女の子が入店してくるんだけど、仲良くしてくれるかな?」
「モチロンよ!また友達が増えるんだね。」
「この子なんだけどね・・・。」
店に入ってきた女の子を見てマリンちゃんは驚きました。
「ソフィアちゃん!」
「私、みんなケンちゃんにあげて彼とは別れてきたの・・・。
だから、これからは自分の為に頑張って働くの。
銀座や吉原で働いていたときは、みんなライバル意識が強くて、私、いつも虐められていた。
だから、ナンバーワンになれば誰にも虐められないと思って生きてきた。
それで、マリンみたいな子に出会って、戸惑っていたの。
私、まだマリンの友達になれる?仲間になれる?」
「当たり前じゃない!ソフィアちゃんは、私の大事な友達だよ!仲間だよ!」

ソフィアは、マリンちゃんに抱きついて泣き出しました。

タンポポ5へ続く



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