ネット恋愛



2000年
9月16日

1通のメールが僕に届いた。
差出人は、仮にAさんとしておく。
ネットサーフィンをしていて、僕のホームページを見つけたらしい。
HPのタイトルに惹かれたらしい。
それで、メールフレンドになってほしいと書いている。
僕は、直ぐに返事を出した。

彼女もゲームが好きらしく、しばらくはゲームの話に花が咲く。

9月28日
彼女が運営しているHPのアドレスを教えてもらう。
プロフィールのページに載っている写真の可愛らしさに驚く。
今は、全然更新していないらしい。
その理由は、ストーカーのような男につけ回されたことがあったかららしい。
同じ職場に就職してくるわ、HPの運営にまで口を出され、あげくAさんは、
その男から逃げるため転職までしていたのだ。

その頃から、かなりプライベートな話題になる。

10月6日
少し大きな地震があった。
彼女は、

『誰だってそうかも知れないけど、私はまだ死にたくないです
未だに自分の『片割れ』に出会えてないですし
男と女は2ピースで完成するパズルだって聞いたことが
あります ひとりのままでは未完成で不完全だから
お互いにもう片方のピースをさがすんですって
でもピースはそれぞれに形が違っててピタッてはまるのは
たった一つだけだとか
今ごろ私のもうひとかけらのピースは何処で何をしてるんだろう?
もう私のコト探してくれてないのかもしれないなぁ』

とメールに書いてきた。
僕は、自分のことを言ってくれてると思い舞い上がった。

その頃彼女は、家族で温泉に旅行に行っていて、なんとお土産を買ってくれていると言う。
それを宅急便で送ってくれることになる。

Aさんは、携帯を、i−modeに替えたという。
それで、昼間は、会社から携帯でメールのやり取りをする。
僕は、トイレに行く振りをして、マメに返事を送った。

10月12日
やっと本名を教えてくれる。

10月14日
Aさんから、お土産のカステラが届く。
その住所を見て驚く!同じ淡路島に住んでいたのだ!
カステラは、実家に持って帰って家族で食べた。
女の子が送ってくれたと言うと皆喜んだ。

10月16日
Aさんは、大阪の会社に転職したいと思ってるらしい。
でも、母親1人を置いて出ていく決心が付かないらしい。

携帯とパソコンのメールのやり取りは続いた。

10月19日
帰宅した僕は、仕事場にいる彼女にメールを送った。
疲れてた僕は、途中で気絶寝してしまった。
起きてから見ると

『帰ってから電話してもイイですか?
メールでは大変なので・・・
(^-^;』

と書いている。アチャー!初めて話が出来るチャンスだったのに!

10月20日
あまりにも頻繁にメールのやり取りをしているので、チャットの方が良いと思い
僕のHPのチャットルームに誘う。
12:00に待ち合わせをして3時間チャットで話す。
何とその時、彼女の方から、デートに誘ってくれたのだ。
夜の明石海峡大橋を見に行こうというのだ!
それも彼女の運転する車で!
10月22日夜10:00、高速道路の入り口の駐車場で落ち合うことになる。

10月22日
朝、7:00から、僕の住んでいる団地の大掃除だったが、夜のためにチャイムを鳴らされても
出ずにさぼる。
夕方、彼女からメール。

『ゴメン!
今日残業決定
Σ( ̄▽ ̄;
帰り遅くなっちゃいそうだよ・・・』

僕は、遅くなっても会いたいというメールを送った。
彼女からの返事が途絶えた・・・。

メールを止めてるのは彼女なのだから、僕もメールを送らなかった。

10月23日
僕のHPででやっている連想ゲームに唐突に

『あなたの気持ちがワカラナイワ(T_T)』

という書き込みがされているのを見る。
Aさんだと直感した。
僕は、彼女を傷つけたのかもしれない。
胸が痛くなり、泣き出しそうになってしまった。

10月27日
何かの行き違いになってしまったようだから、僕は、Aさんからの返事を待っていると
メールを送る。
返事は来なかった。

10月28日
昼間に携帯でもメールを送る。
夜中に、久々にAさんからメールが届く。
件名は、『ごめんなさい』と、『ありがとう』。

『しばらくメール出来なくて御無沙汰いたしました
ゴメンなさい

あの日は、ホントに申し訳ありませんでした
○○さんに相談に乗って欲しいコトがあったので、
ドライブがてら一度お会いしたかったのですが…

でも当日は、都合が悪くなってしまい平日だと○○さんも
神経が疲れるとのコトでしたのでこれ以上、無理を聞いて
もらうのも…と思い諦めました

結局、相談したいと思ってたコトも自己解決できました
でも○○さんと、○○さんのHPに出会わなければ
未だに私は同じ場所に留まり、叩き壊してしまった石橋の
向こう側を眺めていただけかも知れません

ありがとうございました
臆病な私ですが、橋を渡る勇気を○○さんから与えて
もらったように思います 』

実は、彼女には三年前にネット恋愛をしていた人がいたらしい。
でも、彼には奥さんがいた。
だんだん二人は、真剣になり彼は、とうとう離婚すると言い出したらしい。
怖くなった彼女は、彼の前からもネット上からも姿を消した。
それでも、ずっと彼を忘れられなかったらしい。
そんなときに、僕のHPを見つけて勇気づけられたらしいのだ。

『いつか○○さんにも話したと思いますが、例の『自分のもう
ひとかけらのピース』…あれは、
私の片割れのピースはやっぱり彼だったと思うのです
私達は一度も会ったことは無かったけど、見事なくらい『ピタ』っと
合っていました
二人でいると自分に足りなかった部分が補われたようで
とても充実感があり安心できました
でも今となってはもう遅いし彼ももう私を探してくれてないと
諦めていました 』

彼女は、思い切って彼に電話をしたらしい。

『彼は待っててくれました
彼もPCがクラッシュしたり、奥さんに電話のメモリーを
全て消されたりして私のデータが全部消えて無くなって
しまったのだそうです
途方に暮れながらも、淡路島へ来て私を探そうとしてくれたり
NETを探し回って私と同じハンドルのヒトに片っ端から声を
かけたり…
でも結局見つからなくて、最後の砦としてPHSの番号だけは
何がなんでも変えないでおいててくれてたのだそうです』

長いメールの最後に彼女は書いていた。

『○○さんには、よけいな御心配をさせてしまって申し訳
無いコトをしました
宜しければ、これからも友達でいてもらえると嬉しいです
○○さんのサイトのファンの一人として、これからも
応援しています

P.S.へんな意味ではなく、本当に○○さんさえ良ければ
    また一緒に食事とかしましょう 』

僕は、パソコンの前で放心状態になった・・・。

僕は、自分で自分の首を絞めてしまったのだ!
僕は、自分で自分が失恋するように仕組んでしまったのだ!

10月29日
僕は、彼女に返事を送った。
件名は、「短い間でしたが、ありがとう!。」
『○○です。

事情は、分かりました。
良い結果が出て良かったですね。

短い間でしたが、楽しかったです。
カステラ、ありがとうございました。

僕が、潔癖すぎるのか分かりませんが
彼氏のいる女の人と食事をするのは罪悪感を感じるので出来ません。
人のノロケ話も笑顔で聞けません。

幸せになって下さいね。』

僕の一人相撲のネット恋愛は終わった・・・。


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