SMの夜



僕は、大阪の千里丘にある四畳半一間の木造アパートに住んでいた。
L型に同じ部屋が二つずつ並び、真ん中に六畳一間の広い目の部屋が有った。
その部屋に50歳ぐらいの女の人が引っ越して来た。
見るからに水商売という感じの派手な服装の人だった。

ある夜・・・、
会社から帰宅すると、そのオバサンの部屋から男の声が聞こえてきた。
声の感じからすると若い男みたいだった。
皆、寝静まった真夜中、静寂を破るように怪しい声が聞こえてきた。
「あぁぁ〜っ!ふ〜んんっ!」
男の「おぉぉっ・・・。ふぅぅう。」と言う野太い声もする。
おいおいおい!木造アパートやで!音が筒抜けなんやで!
何をしているのかは直に見なくても想像がついた。

他の部屋にも独身のオバサン2人が住んでいたが、やっぱり批判的な気持ちになったのだろう。
廊下を足音も大きく、小声でブツブツ言いながら共用のトイレに向かった。
それでも敵はお構いなしだ。

やがて怪しい声は、怪しい音を伴い始めた。
バシッ!バシッ!「あぅううっ!」

それはまさに猛獣の交尾のようだった。
僕は、だんだん怖くなってきた。
あまりにも生々し過ぎる!

数時間後、エキサイティングな時間も終わったのだろう。
僕も、安らかに眠ることが出来た。

そんな夜が何度かあった。

正月、実家の淡路島から大阪のアパートに戻ると例のオバサンの部屋から子供の声が聞こえた。
普段は別居しているのだろう。
廊下で、部屋から顔を出したオバサンと鉢合わせした。
オバサンは、にこやかに「お帰りなさい!」と言った。
僕は、「ただいま!」と答えた。

そのオバサンは、それから直ぐにアパートを引っ越した。


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