見つめる少女
近所の理髪店の駐車場に、いつも少女が立っていた。
ドロドロに汚れた服装にバサバサの髪。
小学校高学年ぐらい。
ニコニコしながら向かいにあるガソリンスタンドを見つめていた。
辺りが暗くなるまで見つめていた。
それがなぜなのか誰にも分からなかった。
近所に住んでいる人に聞いてみると少女は、お父さんと二人暮らしらしい。
虐待でもされていたのか?
あまり大切にされているとは思えなかった。
理髪店に行くとき近くで少女を見た。
本当に楽しそうにガソリンスタンドを見つめていた。
理髪店の主人も、「危ないから。」と駐車場に立っていることをたしなめたが
言うことを聞かないらしい。
ある日のこと。
会社から帰って部屋に入ろうとしたとき、道路の方で子供達の声がした。
あの少女が、自転車に乗った2人の男の子に石を持って追いかけられていた。
男の子は、「バイオハザート!」と言いながら逃げる少女に石を投げている。
少女は、自分の自転車を押しながら逃げている。
その様子を見たとき、僕は、激怒した。
でも、遠く離れているので見ているうちに3人の姿は見えなくなった。
やがて少女の姿を見なくなった。
突然、ガソリンスタンドを見つめるのを止めてしまった。
その理由は知らない。
時たま、ニコニコしながら自転車に乗った少女を見かける。
淡路SATYを彷徨いている姿も見かけた。
誰も助けないのか?
誰も声をかけてやらないのか?
そう思う僕自身、何もしてやらない。
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