プライド



先輩のHさんに会社の近所のスナックに連れて行ってもらった。
そこにアルバイトの女の子がいた。
話を聞いていると中学校を卒業したばかりらしい。
労働基準法に反しているのではないか?と思ったが多分、複雑な事情があったのだろう。
彼女は、嫌な顔をせず、お酌をしたり、酔っぱらいの相手をして踊ったりしていた。
その後、Hさんは会社を辞め、酒を飲まない僕は、そのスナックに行くことはなかった。

震災の後、僕は、教習所に通った。
そこに、いつも超ミニスカートを履き、ヤクザ風の男に送り迎えしてもらっている派手な女の子が
同時期に通っていた。
同じ教室で学んだり、路上教習で同じ車に乗ったりした。
そんなとき、側に彼女の太股があるので、いつも緊張した。
彼女は、注目の的だった。
それを不快に思う人もいた。
事務所の女の子は、彼女に対して露骨に冷たい態度をとっていた。
彼女も、それは分かっていたと思うが、ミニスカートを止めなかった。
僕は、それが不思議だった。

ある日のこと、送迎バスに乗るために車が停まる場所に行くと彼女が立っていた。
ヤクザの彼氏は、何か用事でもあったのか?
彼女は、僕を見ると気さくに声をかけてきた。
「どこまで進みましたか?」
話してみると礼儀正しくて優しい話し方をする子だった。
その時になって、僕は、初めて思い出したのだ。
この子は、あのスナックで働いていた子だ!

おそらく18歳になったので教習所に通いだしたのだろう。
同級生が親に金を出してもらって高校へ行ったりしているのに、中学校を卒業してから
酔っぱらいの相手をしながら自分で貯めたお金で教習所に通っているのだろう。
彼女は、教習所に通う同じ年頃の連中に言いたかったのではないか?
「私は、自分で稼いだお金で、ここへ来ている!」


その後、彼女がどうなったのか僕は知らない。
多分、カッコイイ車で淡路島を颯爽と走ってるのではないか?
そうであってほしいと思う。



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