ロッキー巡査



1999年7月5日(月)
部屋のチャイムが、けたたましく鳴らされた。
出てみると隣の部屋に住んでいるオバサンだった。
「お宅の車のドア、バ〜ンと開いとるで!!」
車を見てみると、鍵が壊され、中が荒らされていた。
盗られた物は無かったが、取り敢えず、警察に届けを出すことにした。
やがて、小さなパトカーに乗って一人の巡査がやってきた。
それが、ロッキー巡査との出会いだった。
色々なことを聞かれ、車の中に散らばっていた物の指紋を取り始めた。
「お宅の指紋と区別するために、お宅の指紋を取らせてほしいんよぉ。」
それで、また、別の日に派出所に行くことになった。
ロッキー巡査は、帰り際、スピーカーを使って、冗談みたいなことを言った。
僕は、その時、他の車のドアも開いているのに気付き、知らせた。
「あー、これは、ドアの閉め忘れや。淡路は、多いんや。
時計とか、そのままやろ。」
ロッキー巡査は、去っていった。

1999年7月9日(金)
車の鍵を付け替えてもらう。

1999年7月10日(土)
昼過ぎに、ロッキー巡査から電話があった。
明日(11日)に来て欲しいと言われたが、実家に帰ることになっていると
言うと、12日、仕事が終わってからということになる。
「10時11時には、ならんやろ。」と言われる。

1999年7月12日(月)
同じ会社の事務所のオバサン(?)に、派出所の場所を尋ねる。
仕事が終わり、晩飯を食べ、SATYで買い物をして8:00前に
派出所に行く。
そこは、田圃の中にあった。
車も、二台ぐらいしか置けなかった。
中に入ると誰もいない。
「すみません。」と叫んでも、出てこない。
奥から、子供の騒ぐ声が聞こえた。
熊のマスコット人形や、蝉の置物等が、飾られていた。
チャイムの下に、【御用の方は、チャイムを押して下さい。】と書かれた紙が
貼られていたので押してみた。
すると、ドタドタと音がしてロッキー巡査が現れた。
その姿を見たときに、僕は、即座に《ロッキー巡査》という
ニックネームが浮かんだ。
上は、白のランニングシャツ、下は、アメリカの国旗をあしらったトランクス、
足は、裸足にサンダル。
制服を着ているときには気付かなかったが、シルベスタ・スタローンばりの筋肉!
この人は、ロッキーだ!ロッキー巡査だ!
「わしが電話しといてコロッと忘れとったわ。」
そう言いながら、その姿のまま、指紋を採る準備を始めた。
白いロウのような四角い塊が、机の上に置かれた。
それを指の全面になすり付けるらしい。
「犯人やったら黒やけど、お宅は、被害者やから白や。」と言われた。
紙には、左右の指の名称が書かれた枠が印刷されていた。
指にロウ(?)をなすり付けると、ロッキー巡査は、一本ごとに僕の指を摘み
「こう回転させるように。」と指導しながら、紙に押しつけていった。
掌全体を押しつけるときに、
「前にガラス下に引いとってガラス割ってしもたんや。」と、やんわり自慢した。
確かに、すごい力だ。正直に言って、痛かった。
何とか、終わった。
これで、僕の指紋は、警察に記録されてしまった。
犯罪計画を実行に移すのは、止めておこう。
「何か出たら、うちも動くから。」
ロッキー巡査は、最後に力強く、そう言った。

手に付いたロウ(?)は、石鹸で洗えば簡単に落ちると言われたが、
お湯を使い、石鹸とファミリーフレッシュで洗いまくっても、
なかなかヌルヌル感が落ちなかった。


皆様、僕の住んでいる町で、何か困ったことが発生したら、
警察に電話して下さい。
あなたもロッキー巡査に会えますよ。



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