カマキリ



カマキチは、元気な子供カマキリだ。
毎日、草むらで遊んでいる。
カマキチには、カマタロウという憧れているカマキリがいる。
頭が良くてケンカも強いカマタロウは、カマキチの自慢だった。
ついこの間、カマタロウは、結婚をした。
奥さんは、美人で有名なカマコだ。

いつものようにカマキチが友達と草むらで遊んでいるとカマタロウがやって来た。
「おぅ!カマキチ!いつも元気だな!」
「あっ!カマタロウ兄ちゃん!」
カマタロウは、少し寂しそうな顔で言いました。
「今日は、お前に、お別れを言いに来たんだ。」
「ええっ!?カマタロウ兄ちゃん、何処かに行っちゃうの?」
「実はなぁ、もうすぐカマコが子供を産むんだ。だから、お別れだ。」
カマキチには、その意味が理解出来ませんでした。
「なぜ?子供が出来て、お別れなの?」
「お前にも、そのうち分かるよ。お前も男だからな。それじゃ。元気でな!」
カマキチは、去っていくカマタロウの後ろ姿を不思議そうに眺めました。

それから、暫くして草むらで遊んでいるカマキチは、変な音を聞きました。
バリバリ、バリバリ・・・。
カマキチは、恐る恐る音のする方へ行ってみました。
カマキチは、「あっ!」と驚きました。
カマタロウがカマコに食べられていたのです。
カマキチの足は震えました。
食べられているカマタロウと目が合いました。
するとカマタロウは、幸せそうに微笑みました。
怖くなったカマキチは、その場から逃げました。
「なぜ、カマタロウ兄ちゃんは、カマコさんに食べられたんだ!?
なぜ、カマタロウ兄ちゃんは、幸せそうな顔をしていたんだ!?」

時は流れ、カマキチは、立派な青年カマキリになりました。
頭も良くてケンカも強いカマキチは、みんなの憧れです。
やがてカマキチも恋をしました。
相手は、美人で有名なカマミです。
カマキチとカマミは、結婚をしました。
暫くしてカマミは、妊娠しました。

子供が出来てから身体が弱っていくカマミ。
カマキチは、必死で食べ物を運びましたが、カマコの身体は日に日にやつれていったのです。
カマキチは、決心しました。
「俺がカマミと子供達の栄養になってやる!」

カマキチは、草むらで遊んでいる子供達に最後の挨拶をしに行きました。
「おぅ!みんな元気か!」
「あっ!カマキチ兄ちゃん!」
子供達は、カマキチに声をかけられて喜びました。
カマキチは、子供達に会えなくなるのが寂しくなりました。
「今日で、俺は、お前達の前から居なくなるけど元気でな!」
「ええっ!?カマキチ兄ちゃん、何処かに行っちゃうの?」
「ああ。遠いところに行くんだよ。」
子供達は、悲しそうな顔をしました。
「何処に行っちゃうの?」
カマキチは、胸を張って答えました。
「俺は、父親になるんだよ!そのために遠いところへ行く!
けど、きっと帰ってくる!
俺の命は終わらない!」

カマキチは、カマミの元へ急ぎながら、あの日のカマタロウを思い出しました。
「あれは、幸せだったんだね!カマタロウ兄ちゃん!」

カマキチは、満ち足りた顔で笑いました。


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