もろこし太郎(MEGさんとの共同作品)


ある所に髭ばかりが長い黄色のつぶつぶが沢山付いている
町一番おしゃれなもろこし太郎と言う若者がおりました。
「毎日、退屈だなぁ。」
太郎は、寝転んで窓の外を眺めていました。
「何か楽しい事はないかなぁ」
窓の外には小高い丘が見えその丘にはお爺さんのどんぐりの木がありました。
「あの爺さんでも、からかいに行くか!」

太郎は、紙で作った飛行機に乗り、窓からヒュンと飛び出しました。
「おーい、爺さん!俺は退屈なんだ。何か面白い話は無いのか?」
太郎は、紙の飛行機に乗ったまま、どんぐりの木の周りをグルグル回りました。

グルグル…グルグル、しだいにもろこし太郎の目がグルグル回りだしました。
「やぁ、もろこし太郎、素敵な紙飛行機じゃな。
ところでもろこし太郎、そんなにわしのまわりを飛んで目がまわらんのかねぇ」
どんぐり爺さんは、もろこし太郎の紙飛行機の操縦に感心して空を見上げました。

「うんそうだ・・・、確かに目が回る!」
太郎は、紙の飛行機から、どんぐり爺さんの目の前に落っこちました。
「あいたたた・・・!」
「ほーほーほーっ!」どんぐり爺さんは、愉快そうに笑いました。
太郎も、何だか楽しくなって、一緒に大声で笑いました。

そんな二人を見守るようにたんぽぽのダンデ・ライアンがクスクスと笑いました。
「なんて素敵な飛行機なんでしょう。お怪我はありませんでしたか?」
ライアンは優しく太郎に話し掛けました。

「お前も乗りたいのか?」
そう言うと、太郎は、いきなりダンデ・ライアンを地面から引き抜き
飛行機に乗せてしまいました。
「乱暴な奴だな・・・。」どんぐり爺さんは、呆れて呟きました。

「すっごい!空ってこんなに広いのね!」
ライアンは初めて見る景色に驚いていました。
「そうさ、空はきれいだろう!きみに見せたかったんだ、いきなり紙の飛行機に乗せたりしてごめんよ…。」
太郎はライアンに謝りました。
二人が遠ざかるのを見守りながら 「お二人仲良く元気でな…。」 どんぐり爺さんは言いました。

紙の飛行機は、風に乗って高い空を飛んでいました。
そこへ突然のカミナリ!
「嵐だ!紙の飛行機が雨に濡れて壊れてしまう!」
「わーーーーっ!」「きゃーーーーっ!」
太郎とライアンは、クルクル回転しながら地上に落ちて行きました。

二人は大きな乾草の上に落ちました。

「何とか助かった!」と喜んだのもつかの間でした。
「おー、こりゃー、美味しそうなトウモロコシだ!」
たくさんのニワトリが太郎に飛び掛りそうになりました。
「あぶない!」

ライアンは口笛を吹きました。
すると、たくさんのタンポポの綿帽子がにわとりの周りに飛び交いました。
「太郎さん、さぁ、今のうちに逃げましょう!」

「ふ〜っ、何とか命拾いしたぞ。」
「太郎さんここは何処かしら?牧場に着いたみたいだけど・・・。」
ライアンの言葉に太郎は、慌てました。
「牧場!?こんなところに居たら、ボクは、餌にされちゃうよ!
何とか、ここから脱出しなければ!」

もろこし太郎は考えました。 にわとり達に聞こえないように小声でライアンに言いました。
「なんていい思い付きなんでしょう」
ライアンは今までの不安を吹き飛ばすように、にっこりと笑顔になりました。

離れたところでウロウロしているニワトリの前に太郎が飛び出しました。
「うわっ、トウモロコシだ!」
喜んだニワトリが太郎に飛び掛る瞬間にライアンが綿帽子を飛ばし目をくらませました。
「今だ!」
太郎とライアンは、ニワトリに背中に飛び乗りました。
「それ行け!」
牧場の柵を飛び越え、広い野原を駆け抜けました。

いつしか深い森の中に迷い込んでいました。
「おい!いいかげんオレから降りろ!」
ニワトリが怒って言いました。
「これは失敬!ニワトリ君!」
太郎とライアンが飛び降りると、またもやニワトリは怒りました。
「何がニワトリ君だ!オレには、コッコという名前が有るんだ!」

「そうかコッコ君!もう用はないよ。帰った帰った。」
太郎が追い払おうとするとコッコは、まだ怒っていました。
「オレは、腹が減ってるんだ!お前を食わせろ!」

困ってしまった太郎は、「少しなら良いよ。」と言ってしまいました。
喜んだコッコは、太郎に飛び掛りました。
「いっただきま〜す!」

コッコに突付かれた太郎の身体には大きな穴が開いてしまいました。
「うわ〜っ!こらコッコ!食べすぎだって!
これじゃ、僕の自慢の黄色のつぶつぶが台無しだよ!」
「ケチケチすんなって!これでも貼っとけ!」
コッコは、自分の羽を1枚むしり太郎の身体の穴を塞ぐと
「じゃあな!」と言って立ち去りました。

「太郎さん、大丈夫?」
心配そうにしているライアンに太郎は、つとめて明るく言いました。
「これぐらい、へっちゃらだい!さあ、ライアン、行こう!」
太郎はライアンの手を引きましたが、びくとも動きません。
何ということでしょう!そこは沼地でライアンの足は、根を張ってしまったのです。

太郎が、力を込めて引っ張ってもライアンの足は抜けませんでした。
必死で頑張る太郎を見かねてライアンは静かに言いました。
「私は、ここに残ります。太郎さんは、一人で先に進んで下さい。」

太郎は、何だか悲しくなって涙がポロポロこぼれました。
「ボクのせいでライアンは、こんなところで一人ぼっちになってしまう。」
涙が後から後から流れてきました。
その涙が、コッコのくれた羽にかかったときに不思議な事が起きました。
太郎の長い髭がどんどん伸びて金色に翼になったのです。

「うわーっ!ボクは飛べる!自分の力で飛べる!」
喜んで飛び回る太郎にライアンが言いました。
「さあ、太郎さん!自分の翼で飛び立って!」

太郎は、金色の翼で大空高く舞い上がりました。
「スゴイよ!鳥になったみたいだ!」

太郎は、あまりの嬉しさにライアンの事をすっかり忘れて夢中で至る所を飛び回りました。
思い出したのは、ずっと後になってからでした。

太郎は、恐る恐るライアンの居る沼に行ってみました。
そこには、信じられない光景が広がっていました。
「ライアンだ!ライアンが一杯居る!」
沼の周りはタンポポが咲き乱れ黄色く輝いていました。

「ライアン!ライアン!」
太郎が呼ぶと1本のタンポポが返事をしました。
「太郎さん!私は、此処です!」

太郎が近付くと心なしかやせ細ったライアンが居ました。
「ライアン、キミはスゴイよ!
それに比べて、ボクは、何てサイテーな奴なんだ!恥ずかしいよ。」

ライアンは、太郎に諭すように言いました。
「それは違うわ、太郎さん。
私は、太郎さんのおかげで遠くまで来れて沢山の花を咲かせたの。
私は、太郎さんに感謝しているのですよ。」

太郎は、今にも枯れそうになっているライアンを、そっと金色の翼で包んであげました。


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